敦煌学 01 


西暦1900年に王圓籙道士によって莫高窟第17窟から発見された数万点にものぼる大量の古文献は、世界中の歴史学者や考古学者たちを驚愕させました。

やがてそれら( および中央アジア探検で発見された古文献 )をもとにした仏教や言語、社会制度、民俗など多様なジャンルの歴史研究を総称して「敦煌学」と呼ぶようになります。

しかし発見からすでに110年以上がたちますが残念ながら未だにその全貌が解明されたわけではありません。発見時にイギリスやフランス、ロシア、アメリカ、ドイツ、日本などの探検隊が大量の文献を持ち帰ったために大部分が世界中に散逸しました。中国に残った物も盗難に遭ったり転売されたりして行方が分からなくなったものも多くあります。世界中の好事家やコレクターの手に渡ってしまったものも少なくありません。しかも中国では多くの偽物がつくられて出回ったりという状況で、その全容を把握することさえ遅々として進まなかったのです。

また、沙漠の乾燥ゆえに保存されていた文書などが敦煌から持ち出されたことで、紙の劣化が始まり解読が困難になったものも出てきました。さらに、ひとつの文書が破れて断片化したものが多数存在します。例えば、8行目までがイギリスにあり、9行目からがフランスで見つかったなどというケースです。その他にもどの資料を公開するかといった各国所蔵機関の運営方針の違いや、保存方法の違い(劣化による文字の濃淡、紙の変色、巻いた状態で保存しているか伸ばした状態で保存しているかなど。断片であった場合に同じものとは気付かない)などの理由によって系統立てた研究が困難な状況でした。




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